(サン・デグジュペリ 星の王子様より)
ある日王子様の暮らす星に一本のバラの花が咲きました。
その美しさに心奪われた王子様は、一生懸命そのバラの世話をします。
しかし、そのバラはとてもわがままなバラでした。
風がふけばついたてをたててほしいなど王子様にあれこれ命令してきます。
そのうち王子様はバラにどうしてあげればいいのかわからなくなってしまいます。
自信を失う王子様はバラを星に残して星を去ることを決意します。
一見すると王子様がバラとうまくいかなかった原因は、
バラのわがままや傲慢さが原因のように感じますが、
王子様にも少し責任がありました。
え?そうなの?こんなわがままなバラなんて、王子様じゃなくても
きっと嫌になってしまいますよね?バラを自分の星に残し他の星へと
旅する王子様は、旅の途中で出会う星に住む変わった大人に
出会うことによって、あることに気が付いていくのです。
王子は「表面に囚われてしまっていることに気が付きました。
バラが自分に何を望んでいるのか、バラの言葉や行動にとらわれて、
その裏側にあるバラの本当の気持ちである真意が何なのか
王子には見えなかったのです。
バラの本質がつかめていなかった王子の幼さに原因がありました。
王子は星を去った後もずっとバラの事を考えていました。
バラのとげは何のためにあるのか?と地球で出会うパイロットに質問します。
王子は星にいた頃は、バラのとげは意地悪さや冷たさの表れだと思っていました。
ところがいろいろな星を旅することによって知恵がつき成長した王子は
バラが持つとげについての見解がかわってきます。
「自分の立場からバラのとげを見るのではなく、バラの立場から何故バラに
とげがあるのか見れるようになっていったのです。
バラは自分が弱いと思っているから自分を守ろうと思ってとげを
つけているのではないか?わがままを言うのも、そう言うことによって
自分への愛情を図って安心したいだけだったのではないか?
と考えるようになっていくのです」
それは、旅をする途中で立ち寄る6つの星で出会う、おかしな大人たちと
出会うことによって得られた王子の変化でした。
1つめの星で、王子は実態は無力な老人だが、権力があれば
幸せになれると勘違いしている人と出会います。
→王子はここで、バラも女王様みたいな話し方だったけど、
本当はそうじゃなかったんじゃないかと思うようになります。
2つめの星で、人から褒められることが幸せであると
勘違いしている人と出会います。
→王子はここで、バラも自分は綺麗だと思っていたけど、
他人と比較することで自分を安心させたかったのではないかと思うようになります。
3つ目の星で、お酒を飲む自分が嫌いだとわかっていても
お酒を飲むことをやめられない人と出会います。
→王子はここで、過度に自己嫌悪に陥るのは、プライドの高さの裏返しだと思いました。
プライドが高かったバラも実は裏でそんな自分が嫌だったんじゃないかと思います。
4つ目の星で、毎日星を数えているビジネスマンと出会います。
数え終わった星はすべて自分のものだと勘違いしています。
→王子は自分の星にあるバラと3つの火山の事を考えました。
毎日バラに水をやり火山のすすはらいをして火山の詰まりをとっていた王子様は、
所有するということは、その所有物の責任を負うことだと思っています。
星を数えたら自分のものになると勘違いしている人をみて、
この人は実は何も持っていないのだと思いました。
そうして自分が毎日バラに水をあげていたのは、
本当にバラを愛していたからなのだと気付いていきます。
5つ目の星で、1分ごとに外灯に火をつける点灯夫と出会います。
外灯に火をつけることが自分に課せられた仕事だと思いこみ、
非効率に報われない努力を常にし続けている人をみて、
→王子様は風がふいたのでついたてをたててちょうだいと
バラに言われてそれをやりつづけていたけれど、
言われたことの趣旨をそのままやらなくても、
その奥の本質からヅレなければそのままをしなくてもいいのでは?
と思います。
ついたてをたててほしいのは、自分を守ってほしいとの現れなのではないか?
と考えるようになっていきました。言われたことをそのままやらなくても、
他の事でバラの気持ちを補うことは出来たのかもしれないと思ったのです。
6つ目の星で、地理学者が他の星のデータを記録していました。
この地理学者は他の星の事は詳しいのですが、
自分の星の事を聞かれたら何ひとつ答えられませんでした。
→王子様は自分にとって本当に大事なものは何なのか?
を考えるようになっていきます。そしてここで、この地理学者に
「バラははかない。花はいつかきえてなくなってしまう」と聞いて、
それまでバラは強いものだと思っていた王子様は愕然とします。
星に残してきてしまったバラがこのころからすごく心配になっていきました。
6つの星でおかしな大人達に出会った後、王子様は地球にやってきます。
地球にはたくさんのバラの花が咲いていました。
王子様は自分の星のバラは世界でたったひとつしかないと思っていたので、
自分のバラはどこにでもあるふつうのバラであることを知りショックで泣いてしまいます。
そこに落ち込む王子様の横をきつねが通りました。王子様はバラと離れて
孤独でさみしかったので、きつねに友達になってと言います。
しかしきつねは絆はそんな簡単に作れないと王子様をはねのけます。
「友達になるには、相手を受け入れ自分を変える勇気が必要なんだ。
そのためには辛抱が必要なんだよ。そうでないと絆はできない」といいます。
→王子様は勘違いしてました。友達とはどこかにいて、出会えさえすれば
友達になれると思っていたのです。
最初から出来上がっている友達なんてどこにもいなくて、
少しづつ時間をかけてお互いを受け入れていく関係づくりが友達なのだと
きつねから学びます。王子はきつねに会うことによって、
星に残してきたバラはどこにでもいるありふれたバラではなく、
たった一つの自分にとってかけがえのない存在であると気が付くのです。